近年、健康志向の意識向上により、スポーツジムでトレーニングする方が増えています。並行して、筋肉増強を目的として、「プロテイン」を摂取する場合があります。
実は、このプロテインを過剰に摂取すると、口臭や体臭がきつくなるケースがあります。
今回は、口臭相談を受けた患者さんの実例をご紹介してみましょう。
初診時の口臭測定器のデータは、以下のような数値でした。
初診、硫化水素:30ppb、メチルメルカプタン:20ppb、ジメチルサルファイド:274ppb
2週間後、硫化水素:4ppb、メチルメルカプタン:5ppb、ジメチルサルファイド:54ppb
4週間後、硫化水素:1ppb、メチルメルカプタン:2ppb、ジメチルサルファイド:7ppb
いずれの場合でも、口内が原因の、硫化水素とメチルメルカプタンは、認知閾値以下なので、
口内由来の口臭ではありませんでした。実際、歯肉の状態を見ても、浮腫、動揺度、出血も無く、口内の衛生状態は良好です。
ただ、腸内臭由来のジメチルサルファイドだけが、認知閾値8ppbを大きく超える「274ppb」を検出していました。
実際、私の嗅覚による官能検査でも、ただ単に、口を開けた時には、口臭を感じず、肺から息を吐き出した時に、特有の生ごみ臭を感じました。この患者さんの口臭は、口内で発生している訳ではなく、肺から出ているのは間違いない所でした。
【プロテインで口臭や体臭が、強くなる原因】
1.アンモニアの発生
プロテインの主成分は、タンパク質です。それを過剰摂取すると、身体の中で分解の工程が始まり、代謝産物として、アンモニアが発生します。最終的に、肝臓や腎臓で分解され、尿として身体の外に排出されます。しかし、過剰摂取した場合、分解能が追い付かないと、血中に溶け出します。すると、汗・呼気・皮脂腺から排出されるので、どぶクサいような、し尿のニオイが出てきてしまいます。
2.腸内細菌層の悪玉菌の増加
過剰摂取なタンパク質が出た場合、全てが体内で吸収される訳ではなく、一部は、腸内へ運ばれます。実は、腸内の悪玉菌は、タンパク質の成分が大好きです。これをエサとして増殖するので、腸内の悪玉菌を元気にさせてしまいます。最終的に、悪玉菌は異常発酵し、硫化水素・インドール・スカトールのクサいガスを発生させ、便臭やオナラのニオイがきつくなります。
3.皮脂腺の分泌量増加
実は、同じタンパク質でも、動物性の物は、皮脂腺の分泌を促進します。この一部は、加齢臭・オジサン臭の原因であるノネナールの分泌量を増加させ、体臭を発生させます。
【対策】
1.動物性のプロテインの摂取は控え、植物由来の物に切り替えるように指導しました。
2.腸内細菌のバランスを保つために、発酵性食品の摂取と、食物繊維を含む食材を推奨しました。
3.加えて、漢方由来の発酵性食品「カイギョクコウ」の摂取を指導しました。
すると、2週間後には、ジメチルサルファイドの減少傾向が始まり、4週間後には、認知閾値以下に引き下がりました。
実際、私の官能検査でも、臭気は感じなくなっていました。
せっかく、健康のためにトレーニングをしている訳ですから、バランスの良い食生活をしないと、思わぬ所で、口臭が発生してしまうので、注意が必要な症例でした。