最近、除菌療法で使用している「ミノサイクリン塩酸塩除菌軟膏」の安全性に関する問い合わせがあったので、レポートしておきたいと思います。
本剤は、30年以上の歴史があり、重篤な副作用は報告されていませんが、ごくごくまれに、アレルギー症状を呈する時があります。
効能書からの引用になりますが、最新の改訂版には、次のような記載があります。
●ショック、アナフィラキシー様症状(頻度不明)ので、観察を十分に行い、蕁麻疹、瘙痒、全身潮紅、喉頭浮腫、呼吸困難、血圧低下等の異常が認められた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと。
また、感作についても触れています。
●感作されたことを示す兆候(かゆみ、発赤、腫脹、丘疹、小水疱等)があらわれた場合には投与を中止すること。
加えて、副作用の症状についても指摘されています。
●口腔・粘膜障害 疼痛、刺激(発赤等)、知覚異常(歯の挺出感)、口腔・粘膜障害 疼痛、刺激、知覚異常、偏頭痛、発疹、倦怠感、発熱、悪心・嘔吐
そして、妊娠中、または妊娠を希望している方への注意もあります。
●治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。妊婦、産婦、授乳婦等への投与に関する安全性は確立していない。
これは、評価できるほどの症例数が無い事を意味しています。当院では、こうした方へは、使用を差し控えるように指導しています。
また、効能書には記載が無いですが、薬剤の劣化と、品質の注意に関しても触れておきます。
●長期間、使用しなかった時の劣化について
当院から支給する除菌薬は、1年以上、消費期限を有するものを蔵出ししていますが、患者さんの手に渡ってから、しばらく使用していない場合、いつの間にか品質が劣化している場合があります。下図をご覧ください。
上が、下ろしたての新鮮な薬剤で、下が、1年以上経過した後、開封したものになります。明らかに、薬剤の色に変化が分かると思います。実はこの商品には、デザイン上、新鮮かどうかを見分ける工夫が施されています。よく見ると、シリンジの押し出し棒の軸が、「黄色」になっています。この軸の色と薬剤の色を対比して、明らかに色味が違っていたら、劣化を疑うような仕様になっています。
●品質に問題がない例
また、商品を開封後、まれに、下図の様な「切れ込み」や「気泡」が混入している時があります。これは、製造の過程で生じた自然な変化なので、使用して頂いて、何ら問題はありません。
本剤を活用して、16年、6000人近い患者さんに処方してきましたが、明らかにアレルギーを疑う症例は、1件だけでした。その方は、皮膚発疹と痒みが出ましたが、重篤な症状には至らず、薬の活用を控えたら、すぐに健常な状態に戻りました。
薬剤は、大なり小なり、どの薬にも、副作用のリスクがあります。当院から支給するマニュアルにも、急激な体調の変化があった場合は、使用を差し控えるように、注意喚起しています。
賢く使っていきたいですね。